平成4年12月の題「寒」

令和3年1月1日 改

       ●氷  I

       朔風 寒骨に徹る

       草路 暁霜増す

       池水 魚影無く

       先ず看る 薄氷を結ぶを

 

      ●流氷 N

       玄武(ゲンブ・北の神)は 白浪を疑う

       東帝は 花精を放つ

       四島(日本) 咫尺(シシャク)を望み

       流氷 海峡に盈(みつる)つ

 

      ●氷心(まごころ)を思う IN

       寒鴉 小沢に啼き

       竹雀は 飢を嗤うて譟(さわぐ)ぐ

       鴻は去り 氷心静かに

       春を回りて 鶴首の思いあり

 

      ●氷 B

       権門(高位の人)は識ら不(否定) 夷(イ・えびす)の

               餞(セン・はなむけの金品)を伯(ハク・尊敬語)高くす

       七十にして執鞭(教鞭) 作威を哀れむ

       氷雨の寒烟 竹影を巻き

       両鴉噭噭(キョウキョウ・鳥等が鳴き叫ぶ)として 柴扉に喚ぶ

 

      ●氷雪 I

       剣の如く狂飄 紙櫳を吹く

       層層たり暗澹たり 忽ち空を埋む

       梢禽動か不 石泉絶え

       氷雪紛紛として 老翁を苦しむ

 

      ●早春 A

       氷を垂れること三尺 錐銀の下

       清澗淙潺(ソウセン・さらさらと)玉塵を砕く

       春信遅遅たうり 仙境の里

       軒梅一朶 閑人に咲

 

      ●冬夜 N

       一夜の鉤月 夜沈沈

       人は老う炉辺 懐旧深し

       国敗れ氷を抱く 窮迫の日

       昨今暖飽 襟を寛くせんと欲す

 

      ●宿有馬温泉 IN

       暁雪の銀園 池水幽なり

       薄氷紅鯉 回遊を事とす

       温泉は柔滑にして 肢骨を洗い

       酒に酔い琴声は 憂を忘れんと欲す

 

      ●氷 O

       朝陽の冷気 窓に射し明るく

       陌上匁匁として 屧声を挙ぐ

         (忽忽・コツコツ・ふっつと消える)ではないか

       昔日氷に戯れる 村里の雪

       現今の暖飽は 白頭を軽くする

 

      ●氷 S

       寒閏夢破る 五更の鐘

       眠り足る牀は温にして 尚起きるに慵し

       山下は霜華 繁くして雪に似たり

       筇を停めて手を呵すれば 人の縦う少なり

 

      ●氷 B

       失声五日 大なる塊氷

       双眼半聾 貧衲の僧

       一瞥す水仙は 籬下に震い

       両株の梅蕾は 久しく朋と為す

       人生此の如く 田野を巡り

       飽食詠風 神は鵬に似たる

                 (忽忽・コツコツ・ふっつと消える)ではないか

       昔日氷に戯れる 村里の雪

       現今の暖飽は 白頭を軽くする

 

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副詞関係

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疊語関係

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熟語関係

     

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